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BK staff

噛み方で変わる健康

by みっちゃん(BK Staff)



「噛みなはれや」


私に食養生を教えてくれた師匠の師匠がよく言う言葉です。10万人以上の食事指導をしてきた師の師ですが、高齢になった時に最も頻繁に聞いたアドバイスがこの「噛みなはれや」でした。師の師自身が嚥下障害で大阪大学と高知大学を受診したときのことを思い出します。声を発するのも難しい状態でした。

 

体調不良の時には玄米を100回ほど噛むとほとんどよくなるものですが、この嚥下障害の際に、師の師は玄米120gほどを300~400回噛んでおられました。もちろん150回を超えると口の中に米はなくなり、自分の唾液を噛んでいるような状態になります。嚥下障害の症状が出た初期の頃は、粒状ではなく、クリーム状にした玄米をもよくよく噛んでいました。副食はすり鉢ですりつぶしたひじきの煮しめと、みじん切りにしたごぼうのきんぴらで、少量の食事に1時間近く時間をかけていました。一日約800キロカロリーという信じられない食事でありましたが、高知大の血液検査の結果は大変優良なものでした。

 

もちろん何をどのように食べるかという食事の内容はとても重要です。しかし、たとえそこに気を配っても「噛む」をしなければ大切なことを置き去りにすることになります。

 

噛むことは健康に良いということは昔から言われていますから、ほとんどの方がご存知のことと思います。ただし、噛むことは簡単じゃないのです。言うは易く行うは難し。私も普段の生活で食事にかける時間は短く、噛む回数は?と聞かれると、こんな記事を書いてはいけないのではないかと思うくらい少ないのです。ですが、知識として噛むことが良い、必要だと知っていて、よく噛んだときの素晴らしさを実感しています。前述の師の師の実践を見せてもらえたのも良い経験でした。ですから、インフルエンザやコロナにかかった時は本当によく噛みました。まずは苦しいので治りたいのです。そして寝る以外にできることがなく、時間はたっぷりありますからよく噛みました。一口100回以上噛みました。食欲はないので、お粥をさらに濾した玄米クリームやたくあんをよく噛みいただきます。玄米クリームは既に噛んだような状態ですので、気を抜くと飲んでしまいますから、顎をひいて噛みます。2日で発熱しなくなり、数日すると普段より健康的に、お肌までキレイになる経験をしています。また、よく噛むと怪我をした時には傷の治りも速いです。ところが、こんなに実感しているのに。。。と普段の生活を思い出し改めて反省しています。

以下に噛むことの意義を記します。

 

よく噛むと起こる良いこと


(目安として健康な方で一口30秒、約60回)

◯消化の第一歩は口の中からです。消化は唾液によって始まっています。まずは口の中で食物中の炭水化物が少しでも多く消化され、食物が分解されていると、後々胃腸での消化を助けます。

◯時間をかけることで、脳内の満腹中枢を満足させ食べ過ぎを防ぐことができます。

◯肥満、高血圧、胃潰瘍、糖尿病の予防になります。

◯噛めば噛むほど唾液がでます。唾液は口内の耳下腺、顎下線、舌下腺の3箇所から分泌されますが、酵素やビタミン、ホルモンなどの成分が含まれます。人間の身体を健康に導く様々な成分です。

◯唾液により若々しい体や肌、明晰な頭脳を保つことができます。

◯唾液により口内が保湿されることや抗菌作用、噛むことによる正しい刺激で歯や歯肉が強化され、虫歯や歯周病、口臭予防になります。

◯30秒唾液に触れることで発ガン物質の毒性をほとんど消します。

◯噛む動作により脳により多くの酸素と血液が送り込まれます。

◯精神安定、うつなどの改善、ストレス解消、リラックス効果があります。

 

これらの情報は30~40年程前の文献に既に出てきます。近年上記を含む唾液の素晴らしさがより具体的に明らかになってきているようですので、どうぞより詳しい情報をご自分でも入手されてみてください。

 

このような情報を知ると、人間の身体が本当に素晴らしくできていることに感動します。また、こうした研究により噛むことの効果が立証されるずっとずっと昔から、人はよく噛んで食べ物をいただくことをしてきたことを知ると、ほんの数十年での変化に危機を感じます。

日本人の1回の食事の咀嚼回数と食事時間についての報告が農水省のホームページに記載されています。それによると、戦前の食事は1420回噛み、約22分だったのに対し、現代の食事は620回で約11分と、噛む回数、食事時間とも半分に減っているということです。忙しすぎることや食べ物の変化(噛まなくても食べられるものが増えた)、何よりも食べることで命を繋いでいることへの認識や感謝が薄らいでいるのかもしれません。

 

現代の私たちが生きる世界の環境はどんどん悪くなっています。どんなに食事を良いものにしても、私たちが無意識に触れる大気や水の汚染など問題は山のようにあります。私たちはそれらをある程度避けることはできますが、完璧に除去することはできませんので、どうしても身体に取り込むことになります。


また、自分の意思により胃や心臓を動かしたり止めたりすることはできませんし、ホルモンを出し、自律神経をコントロールすることもできません。


しかし、健康に生きるために自分の意思により出来るとわかっていることの1つが「噛む」ことです。大昔から先人たちはそれをやってきていました。現代に生きる私たちはそれを疎かにしてきてしまいました。ですが、私たちに与えられている噛む力をよくよく知った今、それでよいのでしょうか。噛むかどうかは内臓の働きやホルモンと違い、自分の意思で変えられることです。

 

噛むことによって身体を守る成分が身体から出るということは、なんとありがたいことなんでしょう。なんて素晴らしく人の身体はつくられているのでしょう。そして、さらに感動すべきことはその噛むことをするかどうかは、私たちに強制されているのではなく、噛むかどうかを任されています。命に繋がる食べ物の入り口である口。そこから命を養うプロセスが始まります。そのプロセスの最初に噛むかどうかを私たちは自分で決定できるのです。人間は自分の意思で決定して実行するときに喜びを得ます。自分の意思で噛むを行えば、あとは奇跡とも言える人間の身体が食べ物を取り入れて、私たちの身体が良くなるような成分を出して治療しながら、不要なものを排出するところまでしてくれるのです。


よく噛むことは最初は大変かもしれません。しかし、数少ない私たち自身の意思により変えていけることです。そのことを続けているうちに感謝が湧き、噛むことを喜んでできるようになるならば、私たちの生活はさらに喜びの多いものとなると思います。


今日の食事の一回だけでも、よく噛むことで命への感謝を表してみるのはいかがでしょうか。

 

さて、今回「噛むこと」を改めて考え直すことができ、私も反省と学びとを得られてとてもよかったです。「噛む」ことで出る唾液の成分や作用についての化学的な分析結果をたくさん知ることができました。しかし「噛む」ときの回数による圧力の作用について詳しく調べることができませんでした。「噛み方健康法」という本の中に[圧電気と振動と応力で生まれるパワー]という副題で、歯科医の戸田外穂氏の話に興味深いものがありました。圧電気は物体に圧力をかけると発生する電気のことで、骨折などの場合の電気治療の例が挙げられていました。噛むという圧力により顎の中に生じた電気も同じく大事なエネルギー源という記述です。また、噛んで振動が起きると顎も歯も脳も、体全体が刺激を受けて丈夫になっていくとありました。物理学では整序化するとか、秩序化するというそうです。例として、お盆の上にマッチ箱をひっくり返すと、マッチ棒は乱雑な形で並びますが、そのお盆をコンコンとたたくと乱雑だったマッチ棒が平らになってだんだんと並び方がそろってくることが挙げられています。体を構成する原子や分子や細胞を秩序化してきちんと並ばせる力が噛むという振動によって出てくるとありました。応力については、歯にとって顎は土壌のようなものであり、その土壌の密度をつくるのが噛むことにより加えられる応力だとありました。これらの記述はパープルエッジが行っていく骨トレとリンクするところがあると感じました。噛むことの圧力に関する部分の調査は少なかったので、もっと調べてみるとおもしろそうです。

 

参考文献

  1. 噛み方健康法/正食協会

  2. 食の歪みを正す/西岡一/芽ばえ社

  3. 玄米正食によるアトピー性皮膚炎療法/正食出版

  4. マクロビオティックの基本食/友井寛/健康道場

  5. マクロビオティックほんまもんの健康法/松岡四郎/つげ書房新社

  6. 穀菜食による食養療法/松岡四郎/正食出版

  7. 免疫力を上げる一生モノの食べ物・食べ方/田中愛子/三笠書房

  8. ゆっくり食べる:農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics4_02.html

 

 

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