top of page

意外な関係性?骨とメラトニン

更新日:6月22日

私たちの生理的な概日(すなわち24時間)リズムは骨の健康にとって重要です。動物実験では、内在性分子時計に関与する遺伝子が骨において強力な概日発現パターンを示すこと、そしてこれらの時計遺伝子の遺伝的破壊が骨の構造や質に障害をもたらすことが示されています (1,2)。さらに重要なことに、骨リモデリングの循環マーカーは、ヒトと同様にマウスでも日内変動を示し (3,4)、夜勤などによる概日リズムの乱れは、骨リモデリング障害である骨粗鬆症と関連しています(5,6) 。


私たちの体内時計は、夜間に脳内で作られるメラトニンというホルモンによって主に調整されています。体内には4つの異なるメラトニンの供給源があり、それぞれがユニークな働きをしてメラトニンレベルを維持しています(7)。


これらの供給源は以下の通りです:

1. 可視光線によって調節される松果体からのメラトニン。

2. 近赤外光(Near Infrared NIR)影響を受けアップレギュレートされるメラトニン。

3. 細胞内のエネルギー工場のようなものであるミトコンドリアから産生されるメラトニン。

4. 食事から摂取するメラトニン、つまり食事もメラトニンレベルに影響します。


私たちは年をとるとメラトニンレベルが低下していきます。エストロゲン、テストステロン、プロゲステロンといった他のホルモンとともに、メラトニンレベルが低下すると、骨を作るときと壊すときのバランスが崩れます。このホルモンのバランスの乱れは、特に閉経後の女性において、骨減少症や骨粗鬆症といった問題を引き起こす可能性があります(8)。


メラトニンは多機能な抗酸化物質であり、古典的な抗酸化物質とは異なるいくつかのユニークな特徴をもっています。例えば、ビタミンCのような古典的な抗酸化物質がそのような反応物質を1つか2つしか消去しないのに対し、メラトニン1分子は最大10個の酸素活性種(ROS)/窒素活性種(NOS)を消去する可能性があります(9)。このメカニズムは、メラトニンと活性酸素との相互作用によって生成される代謝物にも抗酸化能があるためです。メラトニンとその2次、3次代謝産物が連続して活性酸素を消去するこの反応は、フリーラジカルに対するメラトニンのカスケード反応と呼ばれています。さらに、メラトニンには酸化促進活性がほとんどありません。加えて、メラトニンは両親媒性(脂溶性と水溶性の両方)分子であるため、細胞膜と細胞内のすべてのコンパートメントで抗酸化物質として機能します。古典的な抗酸化物質よりも優れたこれらの特徴から、メラトニンはおそらく最も早く進化した抗酸化物質の一つであり、現在でもあらゆる分子を酸化ストレスから守る第一線の防御物質として機能しています。


酸化ストレスに対するメラトニンの保護作用は、単細胞生物、植物から脊椎動物まで記録されています。メラトニンの主な機能は抗酸化作用であり、他の機能は進化の異なる段階で獲得されたものです。これらの後天的な機能には、暗闇のメッセージ伝達 、光周性動物における生殖調節、昼行性動物における睡眠促進、エネルギー代謝調節、抗炎症、抗がん活性などがあります。 メラトニンの欠乏は、神経変性疾患、心臓病、代謝異常、骨粗鬆症、がん、さらには老化を含む様々な疾患と関連しています(10,11,12,13,14,15)。


更年期前後の女性のメラトニン濃度を測定することで、骨粗鬆症になる危険性のある人を特定したり、その予防に役立てたりすることができる、と指摘する臨床医さえいます(16)。例えば、ある研究では、骨粗鬆症の閉経後女性は、健康な骨の若い女性に比べ、メラトニンレベルがかなり低いことが分かりました。このことは、メラトニンを測定することが、骨粗鬆症を診断する新たな方法となる可能性を示唆しています(17)。


メラトニンは、医薬品と比較すると、骨量の減少を防ぐだけでなく、骨の健康維持に役立つため、より安全で代替的な選択肢になる可能性があります。メラトニンは脳だけでなく、腸管・皮膚・口腔内・鼻腔内・膣内のマイクロバイオームや骨髄など、体内の多くの部位で作られるため、骨代謝に大きな影響を与えます(7,18)。


細胞、動物、さらには人間を対象とした研究を含め、メラトニンが骨粗鬆症の予防に対する有用性のエビデンスが増えつつあります。専門家の中には、メラトニンが骨粗鬆症の単独治療になりうると考える人さえいます。例えば、ラットを使ったある研究では、メラトニンは正常なラット及び卵巣摘出による閉経のラットの骨強度を増加させました(19)。さらに、骨密度の低い閉経後の女性を対象にしたRCT研究では、メラトニンを1年間摂取すると、大腿骨頸部と腰椎の骨密度が増加することが判明しました(20, 21)。これらは、メラトニンが骨粗鬆症の治療薬になる可能性を示唆しています。しかし、どれくらいの量のメラトニンを摂取すればよいのか、どれくらいの期間摂取すればよいのか、いつ摂取すれば最良の結果が得られるのかなど、まだわかっていないことも多いが事実です。


メラトニンは、重力がほとんどない宇宙空間にいるときに起こる骨の問題の予防にも役立つ可能性があります。宇宙飛行士はしばしば骨の問題に直面しますが、メラトニンは骨の破壊を遅らせることで助けになるかもしれません(22)。 さらにメラトニンは、骨の再生を助けたり、放射線や骨折による損傷から骨を保護する材料にも使われ始めています(23)。


ほとんどのメラトニンサプリメントは生理的用量を遥かに超えていることを考えると、概日リズムを調整することで内因性メラトニンの産生を助けるほうが安全ですし、お金もかかりません。概日リズムの調整は、実は朝の習慣から始まります。その理由は、朝に分泌されるコルチゾールも骨の代謝にも大きく関与しており、夜間のメラトニン分泌は、午前中にどれだけ日光を浴びたかに強く影響されるからです。


次回の記事では、メラトニンの多面的な機能と、骨と全身の健康のために概日リズムを最適化することの重要性についてお話ししたいと思います。


参考文献


  1. Partch CL, Green CB, Takahashi JS. Molecular architecture of the mammalian circadian clock. Trends Cell Biol. 2014 Feb;24(2):90-9. doi: 10.1016/j.tcb.2013.07.002. Epub 2013 Aug 1. PMID: 23916625; PMCID: PMC3946763.

  2. Yang X, Downes M, Yu RT, Bookout AL, He W, Straume M, Mangelsdorf DJ, Evans RM. Nuclear receptor expression links the circadian clock to metabolism. Cell. 2006 Aug 25;126(4):801-10. doi: 10.1016/j.cell.2006.06.050. PMID: 16923398.

  3. Pellegrini GG, Gonzales Chaves MM, Fajardo MA, Ponce GM, Toyos GI, Lifshitz F, Friedman SM, Zeni SN. Salivary bone turnover markers in healthy pre- and postmenopausal women: daily and seasonal rhythm. Clin Oral Investig. 2012 Apr;16(2):651-7. doi: 10.1007/s00784-011-0538-7. Epub 2011 Mar 24. PMID: 21431857.

  4. Al-Sobayil FA. Circadian rhythm of bone formation biomarkers in serum of dromedary camels. Res Vet Sci. 2010 Dec;89(3):455-9. doi: 10.1016/j.rvsc.2010.03.024. Epub 2010 Apr 18. PMID: 20400166.

  5. Quevedo I, Zuniga AM. Low bone mineral density in rotating-shift workers. J Clin Densitom. 2010 Oct-Dec;13(4):467-9. doi: 10.1016/j.jocd.2010.07.004. PMID: 21029978.

  6. Feskanich D, Hankinson SE, Schernhammer ES. Nightshift work and fracture risk: the Nurses' Health Study. Osteoporos Int. 2009 Apr;20(4):537-42. doi: 10.1007/s00198-008-0729-5. Epub 2008 Sep 3. PMID: 18766292; PMCID: PMC2651998.

  7. Tan DX, Reiter RJ, Zimmerman S, Hardeland R. Melatonin: Both a Messenger of Darkness and a Participant in the Cellular Actions of Non-Visible Solar Radiation of Near Infrared Light. Biology (Basel). 2023 Jan 6;12(1):89. doi: 10.3390/biology12010089. PMID: 36671781; PMCID: PMC9855654.

  8. Munmun F, Witt-Enderby PA. Melatonin effects on bone: Implications for use as a therapy for managing bone loss. J Pineal Res. 2021 Aug;71(1):e12749. doi: 10.1111/jpi.12749. Epub 2021 Jun 20. PMID: 34085304.

  9. Rosen J, Than NN, Koch D, Poeggeler B, Laatsch H, Hardeland R. Interactions of melatonin and its metabolites with the ABTS cation radical: extension of the radical scavenger cascade and formation of a novel class of oxidation products, C2-substituted 3-indolinones. J Pineal Res. 2006 Nov;41(4):374-81. doi: 10.1111/j.1600-079X.2006.00379.x. PMID: 17014695.

  10. Pandi-Perumal SR, BaHammam AS, Ojike NI, Akinseye OA, Kendzerska T, Buttoo K, Dhandapany PS, Brown GM, Cardinali DP. Melatonin and Human Cardiovascular Disease. J Cardiovasc Pharmacol Ther. 2017 Mar;22(2):122-132. doi: 10.1177/1074248416660622. Epub 2016 Jul 27. PMID: 27450357.

  11. Spinedi E, Cardinali DP. Neuroendocrine-Metabolic Dysfunction and Sleep Disturbances in Neurodegenerative Disorders: Focus on Alzheimer's Disease and Melatonin. Neuroendocrinology. 2019;108(4):354-364. doi: 10.1159/000494889. Epub 2018 Oct 28. PMID: 30368508.

  12. Prodhan AHMSU, Cavestro C, Kamal MA, Islam MA. Melatonin and Sleep Disturbances in Alzheimer's Disease. CNS Neurol Disord Drug Targets. 2021;20(8):736-754. doi: 10.2174/1871527320666210804155617. PMID: 34348635.

  13. Cheng Z, Xiang Q, Wang J, Zhang Y. The potential role of melatonin in retarding intervertebral disc ageing and degeneration: A systematic review. Ageing Res Rev. 2021 Sep;70:101394. doi: 10.1016/j.arr.2021.101394. Epub 2021 Jun 15. PMID: 34139338.

  14. Hardeland R. Aging, Melatonin, and the Pro- and Anti-Inflammatory Networks. Int J Mol Sci. 2019 Mar 11;20(5):1223. doi: 10.3390/ijms20051223. PMID: 30862067; PMCID: PMC6429360.

  15. Cardinali DP. Melatonin and healthy aging. Vitam Horm. 2021;115:67-88. doi: 10.1016/bs.vh.2020.12.004. Epub 2021 Feb 5. PMID: 33706965.

  16. Sandyk R, Anastasiadis PG, Anninos PA, Tsagas N. Is postmenopausal osteoporosis related to pineal gland functions? Int J Neurosci. 1992 Feb;62(3-4):215-25. doi: 10.3109/00207459108999773. PMID: 1305608.

  17. Cao L, Yang K, Yuan W, Zhou S, Zhao R, Qiu S. Melatonin Mediates Osteoblast Proliferation Through the STIM1/ORAI1 Pathway. Front Pharmacol. 2022 Mar 22;13:851663. doi: 10.3389/fphar.2022.851663. PMID: 35392575; PMCID: PMC8980543.

  18. Li T, Jiang S, Lu C, Yang W, Yang Z, Hu W, Xin Z, Yang Y. Melatonin: Another avenue for treating osteoporosis? J Pineal Res. 2019 Mar;66(2):e12548. doi: 10.1111/jpi.12548. Epub 2019 Jan 17. PMID: 30597617.

  19. Guan H, Kong N, Tian R, Cao R, Liu G, Li Y, Wei Q, Jiao M, Lei Y, Xing F, Tian P, Wang K, Yang P. Melatonin increases bone mass in normal, perimenopausal, and postmenopausal osteoporotic rats via the promotion of osteogenesis. J Transl Med. 2022 Mar 16;20(1):132. doi: 10.1186/s12967-022-03341-7. PMID: 35296324; PMCID: PMC8925213.

  20. Maria S, Swanson MH, Enderby LT, D'Amico F, Enderby B, Samsonraj RM, Dudakovic A, van Wijnen AJ, Witt-Enderby PA. Melatonin-micronutrients Osteopenia Treatment Study (MOTS): a translational study assessing melatonin, strontium (citrate), vitamin D3 and vitamin K2 (MK7) on bone density, bone marker turnover and health related quality of life in postmenopausal osteopenic women following a one-year double-blind RCT and on osteoblast-osteoclast co-cultures. Aging (Albany NY). 2017 Jan 26;9(1):256-285. doi: 10.18632/aging.101158. PMID: 28130552; PMCID: PMC5310667.

  21. Amstrup AK, Sikjaer T, Heickendorff L, Mosekilde L, Rejnmark L. Melatonin improves bone mineral density at the femoral neck in postmenopausal women with osteopenia: a randomized controlled trial. J Pineal Res. 2015 Sep;59(2):221-9. doi: 10.1111/jpi.12252. Epub 2015 Jun 24. PMID: 26036434.

  22. Ikegame M, Hattori A, Tabata MJ, Kitamura KI, Tabuchi Y, Furusawa Y, Maruyama Y, Yamamoto T, Sekiguchi T, Matsuoka R, Hanmoto T, Ikari T, Endo M, Omori K, Nakano M, Yashima S, Ejiri S, Taya T, Nakashima H, Shimizu N, Nakamura M, Kondo T, Hayakawa K, Takasaki I, Kaminishi A, Akatsuka R, Sasayama Y, Nishiuchi T, Nara M, Iseki H, Chowdhury VS, Wada S, Ijiri K, Takeuchi T, Suzuki T, Ando H, Matsuda K, Somei M, Mishima H, Mikuni-Takagaki Y, Funahashi H, Takahashi A, Watanabe Y, Maeda M, Uchida H, Hayashi A, Kambegawa A, Seki A, Yano S, Shimazu T, Suzuki H, Hirayama J, Suzuki N. Melatonin is a potential drug for the prevention of bone loss during space flight. J Pineal Res. 2019 Oct;67(3):e12594. doi: 10.1111/jpi.12594. Epub 2019 Jul 19. PMID: 31286565; PMCID: PMC6771646.

  23. Lu X, Yu S, Chen G, Zheng W, Peng J, Huang X, Chen L. Insight into the roles of melatonin in bone tissue and bone‑related diseases (Review). Int J Mol Med. 2021 May;47(5):82. doi: 10.3892/ijmm.2021.4915. Epub 2021 Mar PMID: 33760138; PMCID: PMC7979260.


閲覧数:77回0件のコメント

最新記事

すべて表示

骨の健康増進と骨粗鬆症予防に最適なサプリメント

年をとると骨がもろくなり骨折のリスクが高まります。この過程は骨粗鬆症といいます。 骨粗鬆症のリスクは女性の方が高いが、男性も骨粗鬆症にかかります。骨粗鬆症は、身体障害や死亡のリスクを高めます。転倒して股関節や大腿骨を骨折すると、何ヵ月も動けないことが多く、脳卒中や心臓病のリスクが高まります。 骨粗鬆症はまた、心臓病(1)、アルツハイマー病(2,3,4)、さらにはシワのリスク増加とも関連しています。

骨粗鬆症の血液検査と解釈について

骨量が減っていく場合は原因を探ることが必要です。骨量減少の未発見の原因をよりよく理解するためには、骨粗鬆症の原因を見つけるのに役立つ検査を受けることが重要です。 標準的なDEXA骨密度検査に加え、以下の検査が適切かどうか、医師と相談されることをお勧めします。以下に、有用と思われる検査の例と、検査結果が意味する基本的なことを示しますので、ご自身の状況を医師とよくご相談ください。 · ビタミンD 25

骨強化に最適な運動

どのようなフィットネス・レベルであっても、目標達成に役立つ運動があるはずです。自分に合ったエクササイズを見つけるために、骨を作るさまざまなエクササイズ方法を探ってみましょう。 骨の健康のための体重負荷運動 骨の健康のための筋力トレーニング運動 骨の健康のためのピラティス・エクササイズ 骨の健康のためのヨガ・エクササイズ 骨の健康のための太極拳 骨の健康のための体重負荷運動 骨は、骨に加わる力に反応

Comments


bottom of page